「…それで、私を呼び出したってわけですか」


山崎さんは小さく肯いた。私は頭の中でたった今された話を繰り返す。

――沖田隊長は、今朝から危険な任務へと出掛けた。それは副長の権限で、局長には秘密で行われたことだから、隊長が帰ってくるまでは彼の話題を極力口にしてはならない。
そういった意味合いの話だった。

さっきの妙な静けさはそのせいか。私が沖田隊長の話題を出したのがまずかったらしい。何時もなら食ってかか土方副長が、今日はあっさり引き下がったのもそれ故。


「でもなんで、沖田隊長がそんな危険な任務に一人で?もっと人を多く向かわせれば安全に仕事こなせるじゃないですか」

「…いや、今回のは沖田隊長にしかできないものだったから。それに少ない方がいい任務だったからね」


これまで見てきた任務と言ったら、街の見回りや軽い喧嘩、争いの仲介など。でも腰に差している刀、倉庫に保管されている銃弾は伊達だけではないのだと改めて理解する。
というか、私が人質にされた事件も案外本当に危険だったんだろうな。今更ですけれど。


「そんな訳だから近藤局長には言わないでね」

「言いませんけど…それ、私に伝えてたらまずいものでしょ」

「問題ないよ。副長は心配症なだけだからさ。俺は、名字さんを信じてるから」


いくら保護される立場になったとはいえ、まだ私は疑われている。不本意ながらも当然な対応だ。それを勝手に情報漏洩していいんだろうか。…いや、まずいだろう。私も知らないままだったら良かったのに、微妙に知ってしまったら、どうしたらいいかわからないではないか。
と、山崎さんがぼそりと呟く。


「沖田隊長は……だし、それに名字さんは案外重要だから」


意味のわからない言葉に首を傾げる。私が何だというのだろう。沖田隊長の話と関係あるのだろうか。しかし山崎さんは何も教えてくれず、私は何も言えずに顔をしかめるしかなかった。




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