「そこの君、ちょっと待っ…わっ!これ、ぎゃあああ!!」


背後から奇妙な叫び声がしました。
慌てて振り向いたその先には、地面に倒れた黒髪の隊士。そして彼が倒れた地面には…


「あ…マヨネーズ…」


どうしよう、あれ、今朝のマヨネーズだ。今朝沖田隊長と放置したマヨネーズだ。でも!私は関係ない、関係ない!


「ちょっと君!名字さん!待って!」


地面に倒れたまま息絶えたかと思いきや、黒髪の彼はきびすを返した私を引き止めた。


「わっ私は何もやってないですよ!?」

「え?君なにかやったの!?」


はい、墓穴掘ったあぁ。う諦めよう、諦めて裁きをうけようと覚悟を決めて振り返った先には、無残にマヨネーズにまみれた黒髪の彼がいた。


「うわぁっ何これ、マヨネーズ!?また隊長か…」


不憫な彼は、偶然にも躓いた先がマヨネーズだったらしい。運が悪い。

(ほっとけば、山崎あたりが…)

不意に沖田の言葉を思い出し、まさかと思いながらも尋ねた。


「…もしかして、山崎さんですか?」

「え?何で俺の名前知ってるの?……あああ!ラケットにもマヨネーズがぁぁ!どうしてくれるんだよォ!」


わー当たってたぁぁ!ちょっとだけ見直したよ、沖田隊長!
そして泣き叫ぶ山崎くんがなぜミントンのラケット持ってるのかは、全く理解できません。


「で、山崎くんは何か私に用?」

「そうだった!ちょっと一緒に来てもらえないかな、名字さん」


マヨネーズのことは諦めたらしい山崎くんは、人の良さそうな笑みで言った。


「副長に、渡せって頼まれていたものがあってさ」


そう言われたら断りようがない。私は山崎くんについて歩きだした。


「ところで名字さん」


急に振り返った山崎くんの黒目が、黒曜石のようにきらめく。


「さっき洗濯干しながら、誰かと喋ってた?」



081005




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