3 (いきなり仕事しろっていうのも無理だろうから、今日は馴れることに専念するといい) 朝食後に近藤さんにそう言われた為、軽い手伝いをしながらとりあえず屯所内を回ることにした。 隊士は全員住み込みの上、仕事に必要な部屋や倉庫、道場まであるにも関わらず、思ったよりも面積はない。特別警察といっても所詮公務員。あまりお金はないようだ。 ただ、実家にいるかのような安堵できる空気が漂っているのは確かである。 「お!名字さんだっけ?よろしくな!」 「一番隊はキツいけど、頑張ろうぜー」 「副長の機嫌損ねないようにな〜」 今朝の挨拶のお陰か、元気付けるうに声をかけてくれる隊士たちが嬉しい。最初は真撰組なんてどうなるかと思ってたけど、案外充実した生活になりそうだ。 「あ、そうだ、なんか手伝えることないですか?」 人使いの悪いあの隊長から解放されたのはいいものの、暇を持て余していた。私が声をかけると、ちょっと髪を茶色に染めたひとりの隊士が顔を上げた。 「じゃあこれ運ぶの手伝ってくれねぇ?」 「いいですよ、暇ですし」 「まじ!?助かるよ〜」 茶色の隊士くん(命名)が示したタオルを分担して運ぶ。洗濯をするらしい。丁度いいから洗濯の仕方を教えてもらおう。 * 「あ、俺そろそろ戻らないと隊長にどやされる!」 しばらくして、なんだかんだと洗濯の仕方を教えてくれた茶色くんは去っていった。お陰で洗濯はわかったよ、ありがとう茶色くん! 気づけばもう昼すぎ。私ったらお昼ご飯も食べないで働いてしまったらしい。しかし働く社会人(まぁバイトなんだけど…)に昼飯抜きは流石にお腹が限界で、ぐぅ、と鳴った。あ、ちょっと音大きかった、恥ずかしい、誰もいなくてよかった…! 「ちょっくら厨房でお握りでももらうかな、どうせ見に行くところだし!」 私が駆け出したその時だった。 |