ご苦労様、と口先ばかりで労いの言葉をかけた沖田は、抱えきれない程の荷物を運んできた私の姿に笑みをこぼした。


「よく持ってこれましたねィ」

「あんたが全部要求したんでしょうが!」

「あんた、じゃねーだろ?」

「何ですか、た い ち ょ う !」


沖田は第一印象を裏切ることなく、やはりいやみなやつだった。そして、事務隊士といえども肩書きだけは一番隊に所属することになった私は、早速沖田にいいように使われている。まぁ、要するにパシリ。

近藤さんに頼まれた主な仕事は、掃除、洗濯、炊事。しかしその仕事を邪魔するように絡んでくる沖田のせいでちっともはかどっていない。
当の沖田は飄々と、私をからかったり、昼寝に勤しんだりと、こっちが腹が立つ(仕事をしろ、仕事を!)。


「言っとくけど、パシリじゃありやせんぜィ。俺なりの歓迎でさァ」

「どこが歓迎!?歓迎なら花束のひとつやふたつ持ってこいや!大体、こんなもん持ってこさせて何すんですか。特に副長のマヨネーズ」

「お、良いところに気づきましたねェ名字。こいつは、こうするんでさァ」


良いながらマヨネーズのキャップを外した沖田は、中身を地面にぶちまけた。


「なにすんですかァァ!マヨネーズ、地面に!」


また仕事が増えてしまう…という、悲嘆した私の絶叫に見向きもせず、沖田はポケットからチューブを取り出す。黄色いパッケージの…からし?
目を見張る私の前で、沖田はからしを先程空にしたマヨネーズの容器に入れた。にゅー、と。


「そしてこいつを元に戻しておけば、土方のヤローはマヨネーズだと思ってこいつを食すって寸法でィ」


にんまり、と意地悪い笑み。それは「お前も共犯だ」という意味合いを含んでいた。最悪。


「でもなんでマヨネーズなんですか?マヨネーズなんか、誰が使うかわかったもんじゃないし」


私が素直に疑問を口にすると沖田はぱちくり、とまばたきする。それから、あぁ、と納得したような声を上げた。


「あんた、まだ知らねーのか」

「…?何を」

「ま、夕食までのお楽しみってやつですねィ」


さもおかしそうな顔の彼に、私は首を傾げるばかりだ。そのままどこかへ歩いて行こうとした沖田を捕まえて、もうひとつ疑問を投げかける。


「で、地面のマヨネーズは?」


沖田は目を逸らして、無責任に笑った。


「まァその辺にほっとけば、山崎あたりが踏んづけて片付けるんじゃね?」




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