快晴の空の下にはためく白い洗濯物。気持ちの良い風に降り注ぐ日光。
これほど気持ちの良い天気はそうないと思うと、空を飛び交う宇宙船が残念で仕方がない。
そして、


「頼まれた資料にお茶に和菓子に漫画に土方さんのマヨネーズに先日の近藤さんの恥さらしな写真に洗濯の終わった隊服に…全部持ってきたぜ馬鹿隊長コノヤロー!!」


無茶な仕事ばかり言う上司がいなければ、なんて。




第四話




「本日から事務隊士としてお世話になることになりました名字名前でっす!趣味は骨董品集め、特技は逃げ足!田舎から出てきたばっかなんで色々教えて下さい!よろしくお願いします!」


挨拶はしっかり、元気に、素直に!を家訓に育った私の挨拶に、隊士達はぽかんとした顔で私を見た。摘みかけていた今朝の朝食の鮭が、箸から落ちる。
近藤さんは私に負けず劣らず豪快に笑いながら、ビシビシと私の肩を叩いた。


「そういうことだ!基本的に家事全般を仕事にしてもらうつもりだが、名字さんは親元を離れて精神的にも辛いだろう。皆、助けてやるように!」


近藤さんの言葉に私は不覚にもじん、ときてしまった。ただのゴリラじゃなくてちゃんと局長だった…!なんていい人!
そして、遅れながらもちらほらと拍手が聞こえたかと思うと、それにつられるようにして歓迎の拍手が送られる。


「言っておくが」


そんな拍手に水を差すかのように切り出したのは土方である。冷たい声に拍手が収まる。


「女がいるからっててめぇら気ィ抜いたら殺す。」


真撰組では女中を雇っていないと、土方が言っていたのを思い出す。理由は、機密情報の漏れを防ぐため。そして、異性がいることにより隊規が乱れるのを防ぐため。
そんな訳で、現在真撰組には完全に女がいない。いわば女人禁制の世界。
いくら保護を兼ねてとは言っても、事実上わたしは紅一点で働くことになるのだ。もっとはっきりいうと、男子校のような男たちの中で…つまり、わたしってば貞操の危機!!嗚呼、田舎のお父様お母様、先立つ不幸をお許しくださ


「まァ、名字は女には見えないから心配する必要、ないですぜィ」

「ちょぉぉっとどういうことだてめェェー!!」


ガラリと開いた引き戸から、のそり、と入ってきたのは沖田だった。とっくに朝の召集は過ぎましたよ〜?あんたは重役出勤か!


「あァ?名字、上司にてめェとはいい根性してるぜィ」

「誰があんたの部下か!あと私のどこが女に見えない!?」

「よくみりゃァ女だ。豚のな」

「誰が雌豚ァァ!!?」


やっぱり彼は生粋のSのようでした。
朝寝坊したことを誰にも咎められないことをいいことに、沖田はそのまま近藤さんを挟んで私の向こう側に座った。決して私以外には見えない角度で、歪められた口端に腹がたつ。沖田のやつには言いたい恨みごとが腐るほどあったけれど、とりあえず我慢、我慢。仕事はじめちゃえば顔を合わせることもないだろうし。


「総悟、名前ちゃんと喧嘩すんなよ〜。彼女、今日から総悟の隊なんだからさァ」


…………今、なんと。


「年が近い方が何かと便利だと思ってな!というわけで、名前ちゃんは総悟に色々教えてもらってくれ!」


新生活における期待と希望がガラガラと音を立てて崩れた。
がはは、と笑う近藤さんにわたしは殺意を持ちましたよ。




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