とぼとぼと河原を歩きながら途方に暮れていると、自分と似たように小さくなって歩く、みすぼらしい姿のおじさんがやってきた。彼も私と同じような境遇なのを感じたのか、顔をあげて割れたサングラスの奥で弱々しく微笑んだ。

そのまま、流れでおじさんと肩を並べて河原に座り込む。


「お嬢さん、今夜泊まる宛はあるのかい」

「…いえ、おじさんは帰る家があるんですか?」

「おじさんはね、もう奥さんにも逃げられちゃってね、もう希望もなにもないのさ…」


かわいそうなおっさんだった。そして密かに、彼のようにはなりたくないと思った。ごめんおっさん。


*


「一日中歩き回ったけど、やっぱ私が借りれそうな家、ないなァ。今更実家に帰るわけにもいかないし…最後の手段を使うしかないかな…」


いざとなったら、住み込みで働くしかないと覚悟していた。多分、最悪水商売。自分の不甲斐なさに、いい加減呆れる。


「おい、あっちで斬り合いしてるぞ!」


突然、町が騒がしくなった。
ジョウイロウシとやらと警察かなんかが揉めて斬り合いになったというのだ。斬り合い、という言葉に思わず振り返る。

(ええっ実は私、斬り合いとか好きなんだよね!水○黄門!)←なんか違う

さっきトラウマとかいっときながら、懲りない私に万歳。
人が集まっているあたりへ駆け寄ると、キィン…という刀と刀がぶつかり合う音がした。生で聴く真剣での刀のこすれあいに期待の鼓動が高くなる。

それは集まってきた他の町人も同じらしく、前方からそわそわとした状況が伝わってきた。


「いま斬り合ってんの、前にここらで押し借り働いてた浪士だってさ!」

「あいつには前から手を灼いていたぜ」

「相手の新撰組のやつ、まだ子供だって」

「大丈夫かよ、だって浪士はバカデカいやつだろ?」


騒ぎが大きくなり、人も増えるため、実際この目でみることはできない(あぁ悔しい!)が、大体の状況は掴めた。子供とも見える小柄な青年が、大柄な浪士と互角に戦ってるのだ。

(なんて素敵な状況!そんな凄い剣格が江戸にはいるなんて!)

前方の一人の男があっ、と声を上げた。


「浪士のやつ押されてやがる!…まて、あの青年は…沖田総悟だ!!」


一瞬で人々はどよめいた。オキタソウゴ…?どうやらこのあたりでは名の知れたやつらしい。

町人は益々盛り上がり、見物人の数は段々増えてゆく。こすれあう剣と剣の音が、時折聞こえた。

(それにしても、こんなに激しい戦い、めったにないんじゃないだろうか)





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