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*


「あら、懐かしい」


荷物を整理していたら、懐かしいものが出てきた。私が思わず手を止めると、側に居た夫が目を向けてくる。


「なんだ、それは」

「ふふ、花簪です。昔、使っていたのよ」


手にとって、掲げる。見れば見るほどに、懐かしさが増した。
ありふれた型の、比較的手ごろな値段のその簪はお世辞にも素晴らしい品とはいえない。でも、思い出がよりこの簪を素敵なものに見せる。
まだ江戸が騒がしくなる前の出来事。色褪せない花簪に、思い出が蘇る。


「千景、聞いてくださる?私の大切な思い出話を」


千景は、頷いた。
それに嬉しくなって、私は語り出すのだ。あの一時の、邂逅の物語を。




<藤色小袖に花簪 了>

140425



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