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未だにぼうっとした頭で、思い浮かべるのは千夜のことである。
千夜は町に着くと、一人で帰れるからと去っていった。残された三人は、ただ彼女を見送る他なかった。


「なんだったんだろうな、千夜さん…」


平助のぼんやりとした声に、原田が笑って言葉を重ねる。


「確かに、謎だったなぁ。最後の最後にいい女だなって思わされちまったぜ」

「だよなぁ。すげーわかる」


藤堂は、溜め息を吐く。すっかり彼女に魅せられてしまったのだ。


「…ただ彼女には、いずれ相応しい相手が現われる、そんな気がする」

「お、斎藤くんいいこと言うなー!」



そうして夜が、更けていく。
この日ノ本の夜が明ける前に、いっそう暗い闇が世間を、彼らをのみ込もうとしている。

彼らが京へ上がることになるのは、それから間もなくのこと。


――激動の時代は、すぐ側まで迫っていた。






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