14 未だにぼうっとした頭で、思い浮かべるのは千夜のことである。 千夜は町に着くと、一人で帰れるからと去っていった。残された三人は、ただ彼女を見送る他なかった。 「なんだったんだろうな、千夜さん…」 平助のぼんやりとした声に、原田が笑って言葉を重ねる。 「確かに、謎だったなぁ。最後の最後にいい女だなって思わされちまったぜ」 「だよなぁ。すげーわかる」 藤堂は、溜め息を吐く。すっかり彼女に魅せられてしまったのだ。 「…ただ彼女には、いずれ相応しい相手が現われる、そんな気がする」 「お、斎藤くんいいこと言うなー!」 そうして夜が、更けていく。 この日ノ本の夜が明ける前に、いっそう暗い闇が世間を、彼らをのみ込もうとしている。 彼らが京へ上がることになるのは、それから間もなくのこと。 ――激動の時代は、すぐ側まで迫っていた。 |