10 斎藤、原田、藤堂は、強かった。 藤堂はその瞬発力の高さで次々と敵を負傷させていく。小柄なせいかより俊敏に見え、卒のない剣術に相手は唸る。 原田の得物は槍だ。腕の長さもあり、辺り一面の敵はなぎ倒され、また相手を近づけなかった。 斎藤は、何よりも居合いに優れているらしい。素早い刀捌きは視界に捉えることが難しく、周囲を翻弄した。 …だがそれでも。圧倒的な人数に、彼らは押されていた。 破落戸共も、決して弱くはないのだ。口ばかり達者で、集団でしか行動できない奴らかと思いきや、個々の戦闘力は高い。いくら三人の方が強いといっても、この人数で持久戦に持ち込まれたらひとたまりもない。 その時、凛とした言葉が響く。 「斎藤、右よ」 斎藤は、はっとして右側から迫る男を弾き飛ばす。 千夜の声だった。三人に守られ背後で佇んでいた彼女は、冷静に指示を出していく。 「原田、左に払いなさい」 「ッ、おう!」 「後ろが疎かよ、藤堂」 「ああ、わかったよ!」 その指示はあまりにも的確だった。もちろん、打ち合わせはしていない。だが千夜の見極めが正確だと、すぐ判断を下した三人はその声に従う。その功績か、徐々に優勢は三人へ傾いていった。 頭の男は、それに気付いた。焦ったように声を張り上げる。 「女だ!女をやれ!!多少傷つけても構わねぇ!!!」 |