「見つけたぜぇ、紫苑の瞳の嬢ちゃんよぉ」


その男たちは、見るからに破落戸といった風情だった。薄汚れた衣に、各々鋭利な刃物を携えている。
斎藤は彼らの風貌に見覚えがあった。例の、千夜と出会った時に彼女を追いかけ回していた浪人である。


「貴方たちは…」


千夜もそれに気付いたらしい。顔をしかめ、嫌悪に満ちたような表情を浮かべた。だが彼らは、それを喜ぶように下品た笑い声を立てた。


「こんなところにのこのこやってくるとはなァ。手間が省けたぜぇ」


頭であるらしい男は舌舐めずりをし、千夜を眺めまわす。


「改めてこう見ると、美しい女だ。白い肌、滑らかな黒い髪、紫苑の瞳――聞く噂に違わない。お前が居れば幕府が動く。なんたって、お前の父はあの…」

「黙ってちょうだい。御託はいらない、目的を言いなさい」


千夜が遮る。鋭いその言葉に、男は一瞬意表を突かれたように口を閉ざす。が、すぐにまたニタニタと笑った。


「お前を連れていくんだよ。この国を変える為になァ!」


そこで、スッと千夜の前に影が立ちふさがった。


「彼女には、指一本触れさせない」

「ち、あの時の侍か」


斎藤の姿に、男は舌打ちをする。だが背後に控える仲間たちに目をやり、自身ありげに言い返す。


「だが…この手勢、今度はお前に引けはとらせねぇぜ」


男の言葉は、決して虚勢ではないだろう。事実、ここへはかなりの人数で押し寄せたらしい。小屋の外にも多く仲間を引き連れているようだ。
千夜は冷静に、判断を下す。


「外へ出ましょう。ここは、狭いわ」






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