三人は結局、千夜の申し出を受けることにした。そう告げると彼女はにっこりと笑う。


「良かった。昨日は邪魔をされて、用事を果たせなかったのよ。流石にあんなことがあって、私一人で行くのは厄介だと思ったの」


先程の剣幕とは打って変わったその笑みに、一同は思わずどきりと頬を紅潮させた。千夜は美しい女性なのである。簪を付け直す千夜に、原田は赤い頬を誤魔化すように問う。


「なんでわざわざ俺たちを雇う?由緒正しい娘さんなら、俺たちのような浪人崩れに頼まずとも、他に護衛の当てくらいあるだろう。一度帰ったのに、どうしてまた一人で来た?」

「簡単な話です。お付きには知られたくないから、昨日も今日も撒いてきたの」

「撒くって…世間では、黒船だ尊王だと騒がしいってのに無茶だぜ」


あまりに堂々と言ってのける彼女に、男たちは唖然とした。


「無茶は承知ですわ。だから貴方たちに頼んだのです。だって、江戸一の腕利き集団なのでしょう?」


そう言われてしまえば、それ以上追及することはできない。それでも食い下がるように、平助は尋ねた。


「そこまでして果たしたい用事って、なんだよ?」


この問いには、千夜も少し考えるように押し黙る。そして小さく呟いた。


「鍛冶屋に、行きたいの」


140331



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