3 「こうして並ぶと似ているもんだなァ」 すぐに土方さんや山南さん、近藤さんと打ち解けた千夜を眺めて呟いたのは新八だ。似ている、とは千夜と千鶴・薫のことである。個々に見るとそうでもないが、三人並ぶと皆似た顔立ちだった。 それにしても――・・・ 「えらく、別嬪だよな」 「だよな!千鶴も可愛いけど、千夜さんもすげー美人」 「千鶴は守ってやりたい愛らしさだが、千夜さんは艶やかな美人っつーか、高嶺の花だな」 なかなか、見ないような美女っぷりであった。立ち振る舞いにも粗はなく、前世で高貴な身分だったというのも頷ける。 「いや!高嶺なんて俺は飛び越えてやるぜ!」 新八は突然そう宣言すると、原田が止めるより前に千夜の手を取った。 「千夜さんっ彼氏とかいないんですか!」 「俺の女に気安く触れるな」 パチンと物凄い音を立てて新八の手が叩き落とされたのは、ほぼ同時である。 見れば、良く見覚えのある金髪に赤目の男が千夜の肩を抱いていた。 「風間。座敷に上がるのなら、一言挨拶してからにしてはどうだ」 「すまない斎藤殿。風間は千夜様のことになると、周りが見えなくなるのだ」 「そういうとこ、阿呆だよなー・・・って、おい風間!さり気なく足踏んでいくな!」 わらわらと、続いて天霧と不知火が入ってくる。いくら前世で憎かろうと、今では和やかに笑いあえる関係であった。 「いや、今のはお前が悪いだろ。遅かったな不知火」 「バイト帰りだ。で、この通り仕事帰りのこいつらに捕まった」 原田の横で不知火がうなだれた。相変わらず、風間に振り回されているようである。 「それよりも!風間っお前、千夜さんにいきなり何してんだ!どういう関係なんだよ!?」 「どうとは、妻だが」 あまりに堂々とした返答。 臆面もなく言い放った風間に、皆静まり返った。 「姉さんは、風間さんの奥さんなんです。・・・昔も、今も」 千鶴は、のんびりとした口調で追撃する。見るからに「よく理解できない」と書いてある一同の表情を、風間は鼻で笑った。 「そういうことだ。わかったら千夜に手は出すなよ」 「千景、その言い方はあんまりです。それに、まだ今世では婚約しただけだわ」 「俺以外を選ぶ可能性があると?」 「それは!・・・な、ないですけれど・・・」 千夜はちょっと怒ったように言いながらも、その顔は照れから真っ赤である。寄り添う千夜と風間は、すっかり二人の世界を繰り広げていた。 「あーこれは、入る余地無いって感じだな」 「おい新八、すっかりいちゃつくダシにされてんぞ」 「うるせー!ちくしょー!!」 見事にスルーされた新八を周りのメンバーが宥める。 平助は、ふと首を傾げた。 「あれ、土方さん驚かないの?」 先程、驚きに固まる皆を尻目に彼が落ち着いた態度であったのを、思い出したのだ。 平助の疑問に、土方は疲れた顔で返した。 「・・・俺が何年間、あいつの惚気を聞かされ続けたと思ってやがる」 ぐいっと一息にアルコールを飲み干す。今世では前ほど酒に弱くないことを嬉しく思った。全く、あのバカップルの相手はシラフではやっていけない。 (これは、あるかもしれない来世の話。) 121215 |