「ねぇ千鶴ちゃん。君のクソ生意気な兄貴はどうしたの?」


沖田が身を乗り出して千鶴に問い掛ける。ちなみに沖田と平助、斎藤は揃って千鶴の学校の先輩だ。


「ええと、薫は駅に迎えに行ってくるってさっきメールが・・・」

「クソ生意気で悪かったな。このロリコン野郎が」


千鶴の後ろの襖がスッと開き、低い声が響く。薫だ。今世も彼は千鶴の兄であり、しかし立派なシスコンと化している。
沖田と薫が互いに黒いオーラを出しているのを脇目に、斎藤は首を傾げた。


「雪村。迎えに、とは・・・その女性か?」


その言葉に一同は会話を中断し、薫の横へと視線を移した。
白い肌に艶やかな黒髪。落ち着いた雰囲気の女性。微笑みを浮かべる彼女に、見覚えはない。


「皆さんに、紹介したくて来てもらったんです」


千鶴は彼女を自分の横へと座らせると、一同に向き合った。


「私の姉さんなの」

「皆様お初にお目にかかります。雪村千夜と申します。前世では、千鶴を守ってくれてありがとうございました。雪村家頭領として心よりお礼申し上げます」


無駄のない綺麗な動作で、彼女、千夜は三つ指を突いた。
あまりに唐突な紹介に、皆唖然とする。


「姉さん・・・・・・って、今の、じゃないよな?」

「今も昔もだよ。姉上は僕たちの従姉妹で、雪村の名を再興してくれたんだ」

「そうなんです。明治に入ってからは姉さんが私の面倒を見てくれたの。薫との仲立ちをしてくれたのも、姉さんなの」


平助の問へ薫と千鶴は口々に、千夜への賛辞を述べる。あまりに二人が褒めるので、当の本人はほんのり頬を染めた。


「そんな大層なことは、していないわ。私が勝手をしちゃって申し訳ないくらいだったもの」

「もう、相変わらず千夜は謙虚なんだから。雪村を継いで千鶴や薫を守るだけじゃなく、貴女は鬼の統率にも一役買ってたじゃない」

「そうですよ。若紫鬼様は我ら女鬼の希望でしたから」

「わっ・・・随分懐かしい名前で呼びますね、君菊さん・・・!」


元鬼たちとは親交が深いらしく、慣れた様子で言葉を交わす。
それから、再び新選組の男たちに向き直りにこりと笑った。


「皆さんのお話は、ずっとお聞きしていました。奇妙な縁だけれど、こうしてお会い出来て嬉しいわ」






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