駆けつけた先には、既に持ち回りの軍人たちが対処を始めていた。怨霊が数体、現れて暴れたのだという。その怨霊自体はすぐに帝国軍の手によって追い払われたらしい。怨霊たちが頻繁に出現し出して二年ばかり。最初の頃は対処もままならなかったが、今では対怨霊のノウハウが蓄積されつつあり、被害も最小限に抑えられるようになった。あまり知られていないがそれは、有馬の後ろで息を切らしている九段の功績である。

今回、怨霊自体は素早く退治できた。それはいい。だが、――その被害は決して軽いものではない。


「酷いな…」

「ええ、怨霊が暴れた際に、火が付き燃え広がったようです」


有馬と九段の眼前には、怨霊によってもたらされた災禍が広がっている。建物が数件、炎に飲まれて消失しようとしていた。
消火作業は進んでいるらしかったが、それでも今火のついている数軒はどうしようもないだろうと思う。燃えさかる炎を前に、知らず九段は奥歯を噛みしめる。どうにも、炎を前にすると胸がずんと重くなるのだった。

(我が身のなんと、不甲斐ないことだろう)

揺らめく赤は、九段の無力さをあざ笑うかのように見える。帝国軍内部にもぐり込み、精鋭分隊を作り、それでもまだ九段は満足していない。怨霊は増える一方で、被害は減ることがない。こうした小さな被害でも、目の当たりにする度につらく感じた。

と、鋭い声が後方から上がる。


「おい、君!待ちなさい!!」


さっと目を向ける九段と有馬。
見ると、一人の女性が今まさに炎の中に飛び込まんとしているところだった。





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