そう、二年。あっという間だった気もするけれども、二年の月日は大きい。特に子供にとっては。少し目を離した隙に、彼らはどんどん成長していく。その速さは、ちょっと怖いくらいだ。


「あれ、九段様は背がまた伸びたんじゃないです?」


所用で、隣家の萩尾家に出向いた際にばったりとお庭で遭遇した。昔私を拾ってくれた、この家の跡継ぎである。突然投げかけられた声に、九段くんは驚く風もなく、首を横に倒す。


「む?そうか?」

「そうですよ。この間合ったときはもう少し視線が下だったじゃないですか」

「でもまだ、椿よりは低いぞ」

「私、十二歳の子に追い越される気はないですからね」


と、言いながら彼の頭をなでる。くすぐったそうに少し身を竦めた九段くんは、しかしなんだかやや不満そうにこちらを見上げる。
九段くんは年頃なのか、最近私との身長差が気になるらしい。会う度に私との視線の高さを気にするそぶりを少し見せる。だが心配しなくても、九段くんならそのうち軽々と私を越す高身長になりそうだ。私の身長は女子の平均かそれを少し上回るくらいであるので、そんなにハードルは高くない。


「今は休憩中ですか?」

「そうではない。外で術の実践をしてたのだ」

「あらあら、邪魔してしまいましたね。修行頑張ってくださいね」


もう一度九段くんの頭を撫で、さっさと退散しようと方向転換する。しかし、ぴん、と着物の袖を引かれた。予想外のことに、引き留める手の主である九段くんを見つめると、彼は慌てたよう口を開く。


「ま、待ってくれ!ちょうど今から休憩しようとしていたところでな!あ、ああっ、そうだ千代はどうしている?!」

「千代ちゃんは、今日は調子が良くなくて眠っていますよ。残念ですが、遊べませんね」

「そ、そうか…あとで鶴を折って持って行こう」

「それは、とっても喜ばれるかと。九段様の折り紙、とっても素敵ですからね。私も大好きです」

「だいすき?!!そ、そうか?!」

「はい、九段様以上に折り紙の上手な方には私、お会いしたことないですよ」


というよりも、折り紙が得意な知人の方が少ないのだが。とはいえ、九段くんの折り紙が綺麗で好きなのは本心である。上手く褒める言葉が見つからなくて申し訳ない。
けれども九段くんは、私の言葉にぱあっと顔を輝かせた。


「そうか!椿に喜んでもらえるのは、我はとても嬉しい!よし、千代だけでなく椿にも何か作ろう!何を作ろうか!」

「ありがとうございます。でも、私の分はいいですよ。九段様忙しいでしょう?」


目に見えて張り切り出した彼を微笑ましく思いながらも、やんわりと断る。この少年は、私なんかよりも余程忙しく過ごしている。将来有望の彼の手を煩わせるのはいただけない。
と、九段くんは私をじっと見つめた。先程のきらきらした笑顔が曇り顔になっている。どうしたのかと見返すと、九段くんは憂い顔のまま切り出した。


「椿に、お願いがあるのだが」






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