1 それが自分の始まりであったはずなのだ。でもそれが何を意味するのか、皆目検討はつかない。 闇色で塗りつぶされた世界に、私は一人立ち尽くしている。冷たい。見れば、土を踏む足は何も履いていない。上を見上げる。本来なら満天に輝いているはずの空は、薄い雲に覆われ、どんよりとして星なんて見あたらない。 行かなければと、思う。行かなければ。皆のところへ。だが、身体は意に反して動かない。行かなければ。でも、どこへ?私はどこへ、誰の元へ行こうとしているのだろう。 何もわからない。思いだそうにも、何も浮かばない。 そして、瞼の奥に焼き付く色。 赤い、赤い――――。 「赤い―――なんだっけ。赤といったら、林檎?それともリボンの色かしら。ああ、どうしても、此処までしか思い出せないんだよなあ」 朝日が差し込んでいる。眩しい。 寝起きの独り言はやや舌っ足らずに自分の耳へと響く。それで、ようやく意識が覚醒した。伸ばしかけた手は空を掻き、ぱたんと布団に倒れ込んだ。 いい陽のひかりだ。今日も、お天気になる。 |