再び、貴方と


※現代EDで幸せに暮らす弁慶とあかりが、遙3アルティメットの発売前にわくわくしてる話。メタ発言あります。ご注意ください。



なんと、12年ぶりになるらしい。秋に発表があってからずっと、実感がないままでいたけれど、気づいたら遂に一週間を切っていた。とりあえず、予約はすませていた。もちろん、一番高い、いわゆる「そのボックス」である。だって私は、運命はやはり変えるべきだと思うのだ。私はそんな望美ちゃんを、当時から、応援しているのだから。
予約店舗はものすごく迷った。店舗特典なるものがあるという。個人的には望美ちゃんのとってもかわいいグッズがついたところが――…でも、どうしても本能にあらがえずに、つい彼のタペストリーの……いやいや、それは、おいておいて。


「弁慶さん、アルティメットってすごくないですか」

「一体何の話ですか」


日曜日夜。
発送連絡メールに気づいて直前まで迫った発売をかみしめながら、問いかける。二人並んでゆったりと座りながら、各々趣味へはげんでいる最中だった。私は携帯電話をみながら、彼は読書に勤しんでいた。
私の言葉に、恋人は顔を上げて怪訝そうな顔をする。かつて異世界からやってきた彼だが、あれから幾年も経った今、私よりよほどこの世界でうまくやっていると思う。


「いや、だからアルティメットですよ。まさか、こんな年数が経ってから、すべてを一新してまたあの世界をのぞき込むことができようとは……しかもアルティメット。まさかの横文字」

「ああ、その話ですか。今更、横文字だからどうとかはないでしょう?だって、迷宮だって、ラビリンス読みだったじゃないですか」

「た、確かに……!」


ぱたん、と本を閉じて弁慶さんは私の手元をのぞき込む。そこには、発売を目前としたアルティメットの特集ページが開かれている。
元々寄り添って座っていたのだけれど、同じ画面を見ることになり、距離がさらに縮まる。彼とこの世界で恋人となって、一緒にくらすようになって、家族になって、もう何年も経つのに相変わらず、こうして突然距離が縮むとどきどきしてしまうのがなんだか悔しい。
不意なときめきを誤魔化すように、文字を追った。


「えええ、どうしよう。新たな弁慶さんと、再び運命をたどるなんて。改めて、あの弥山に登ることになるなんて……すごく、どんな気持ちになればいいか複雑ですね」

「でも、お好きでしょう?」

「はい?」

「お好きでしょう? 僕は、悲しい結末だったけれど、嫌いではなかったですよ。君が僕と一緒に心中してくれたことは、不本意ですが、愛を感じましたね」

「……」


答えに困る。
理由は明確だ。私も同じように、不本意ながらも、とても愛しい気持ちで彼に向き合っていた日々を思い出したからだった。でも、それを改めて伝えるのはとても恥ずかしいことで。話を逸らそうと口を開こうとするも、それより先に、さらに念を押される。


「ねえ、ちゃんと教えなさい。君は、面倒だ厄介な展開だと言いながらも、結局好きで僕と運命を添い遂げようと思うんですよね?」

「う…は、はい……そうですよ好きだから仕方ないんです」

「ふふ、素直で結構ですね」


彼の隣で、軍師補佐として働いていた頃の自分のままなわけではない。この数年で、自分なりに彼の隣でパートナーとして生きることを真剣に考えてきたのだ。それなりに、対等に彼を支えられるようになりたいと。それでも、まだまだ適わないと思うのはこういうときだ。でもこれは、惚れた弱みというものなのかもしれない。
やっぱり、いまからまたあの異世界での記憶をたどるのは、なかなか勇気が居ることだ。発売してからもなかなか進められなさそうだな、と、そんな風に思ってたところで、携帯電話を取り上げられる。
代わりに、彼が私の顔をのぞき込んできた。


「と、いうわけで。発売まではまだ数日ありますし、今日もまだ、就寝まで時間はありますからね。あかり」

「は、はい……?」

「今日のところは、二人で思い出話でもしましょうか」


といいつつ、触れてくる彼の手つきはどこか危なげで。
これは穏やかな昔話という空気ではないのは承知の上で。
結局、彼に逆らえずに手のひらで転がされてしまう私はきっと甘いのだ。惚れた弱みで、つい、彼を甘やかしてしまうのである。



170219
アルティメット発売楽しみですね!





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