6 『神子軍記』は和綴じ本だ。 見た目的には、現代でよく見る本と同じ形態。だが使われているのは二つ折りにした半紙で、折れた方を重ね合わせて背にし、紐で綴じて冊子にする。 私はこの世界にくる前からそれを知識として知っていたものの、実際に紐の組み方は弁慶さんに教わった。この神子軍記も、弁慶さんが教えてくれた方法で綴じられてた。 私は神子軍記を綴じている紐を、取りだした小刀で迷いなく切る。そして冊子の紐を解いていった。突然、神子軍記を分解し出した私を止める余裕もなく、望美ちゃんはびっくりしたようにただ私の手元を見ている。 (もしこれが本当に、私のものだとしたら…) 紐を外し終えた私は、半紙を破らないように一枚一枚広げていった。そして。 「見つけた、やっぱりね」 二つ折りにした半紙を広げる。ちょうど紐を通していたあたり。製本してしまったら見えなくなる位置に、軍記の本文とは関係のなさそうな文字が綴られている。 望美ちゃんは、目を丸くした。 「こんなところに…文字があったなんて…」 表の神子軍記の方には、神子である望美ちゃんや八葉のこと、彼らが関わった事件や出来事が綴られ、そこに筆記者の情報はない。 けれども隠されたこの文章は、違った。明らかに記述者が、自分の記述用として綴った覚え書き。それは、日記だった。 (私ならばきっと、ここへ隠して書き留めると思ったけれど) 案の定、アタリだ。 しかもこの日記は活字体であるし、時々カタカナや英語なんかも混じり、この世界の人間には容易に理解できないようになっていた。 ひと通り目を通して、改めて確信。これは間違いなく、私の記述だ。身に覚えがなくても、そうとしか言えない。 「望美ちゃんは、この文字のことを知らなかった。ここには、私しか知らないことも書いてある。だから、これは私のもので間違いないよ。ね?」 私の言葉に、望美ちゃんは安心したように涙腺を緩ませた。 |