手のひらを返したような私の態度の変化に、驚いたのは望美ちゃんの方だった。自分で話ながらも、信じてもらえるとは思っていなかったらしい。


「え…あかり、信じてくれるの…?」

「うん。だって、望美ちゃん嘘ついてないでしょ」

「そう、そうだけど、あんまり上手く説明できてないし、今まで信じてもらえたことないから…ほ、本当に…?」


望美ちゃんは目を瞬いて、何度も何度も確認する。

私は彼女の言葉に息を詰めた。今まで信じてもらえなかった、それがどういうことを意味するのかに気付いてしまった。
時空を巡る彼女は、一人だけ連続した記憶を維持していたのだ。似ているようで異なる時空の連続。時には共有できない記憶の相違に苦しんだのではないか。もう耐えられないと打ち明け話をしても信じてもらえず、望美ちゃんは終わらない孤独を抱えていたのではないかと。

(それでも、彼女は私を探してくれた)

別の時空での自分の死なんて、ピンとくるわけがない。でもこれ以上望美ちゃんを、一人にはできない。私は、私のせいで彼女をこれ以上時空の迷路へと旅立たせてはいけない。直感的に、そう思った。

だから私は彼女を安心させるように、手を握り返しながら何度も頷いた。


「本当だよ。これを出されたら、もう否定なんてできない」


これ…望美ちゃんが『神子軍記』と呼ぶ冊子に目を落とす。そして、一旦望美ちゃんから手を外すと何枚かページを捲る。
表紙だけでピンときたが、ますます信じるしかなさそうだ。そこに綴られているのは、確かに私の筆跡だった。


「本当に、信じて…くれるの…?私が、捏造した可能性だってあるじゃない…」


それでも尚、尋ねる望美ちゃんに私は笑いかける。そして疑り深い彼女に、ある提案をした。


「それじゃあ、確認してみようか」



140310



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