いつの間にか、あんなに降っていた雨も止んでいた。厚い雲が途切れ、光が差し込む。
晴れ晴れとした光の中で、私たちは顔を見合わせそれぞれ表情を緩めた。


「清盛殿は消え、荼枳尼天も倒しました。これで、我々の世界もこちらの世界も、平和になりますね」


弁慶さんの言葉に、皆は頷く。本当に世界を救ったのだ。遂に戦いが、終わったのだ。

――全ては望美ちゃんの、努力の成果。決して彼女が”白龍の神子”だからできたわけではない。望美ちゃんの正義感や諦めない心が全てを導いたのである。そして、私は皆それをわかっていた。
だからこそ、彼女は強く美しいのだと。私たちは彼女を誇りに思うのだ。


「だが…どうやって、元の世界に帰ったものだろうな…」


達成感に浸る空気の中で、現実的な発言をしたのは九郎さんだった。
私も思わずはっとして、身動きを止める。

(そうか……全て、終わったんだ)

当たり前のことに、やっと思考が追いつく。戦いが終わった。全てが終わる。それは即ちこの旅が、望美ちゃんと八葉との関係が終わることを示していた。
私はそっと、隣に立つ弁慶さんを見上げる。…別れの時が、近づいている。

当然の結果だった。初めから、わかっていたことだ。私と弁慶さんは住む世界が違う。ずっと一緒にはいられない。

(弁慶さんに特別、好かれているわけじゃないから)

残念なことに、この擬似的な恋人関係も解消になるだろう。
でも、生きている。望美ちゃんが言うような、私か弁慶さんが死ぬという最悪の結果にはならなかった。弁慶さんは、平和な向こうの世界へ戻れる。…もう戦わなくていい。苦しむ必要はない。彼は死の運命に苛まれることはなくなる。それだけで、十分に思えた。

(だって私は、弁慶さんを救う為に向こうの世界に行ったんだもの)

握りしめたのは、今までの全てを書き留めた、冊子。私はそれを見つめると、一呼吸置いて顔を上げた。





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