「あかり、大丈夫!?」


望美ちゃんが駆け寄ってくるのと同時に、弁慶さんは私を解放した。それから素早く私の上着を脱がせると、着物も捲くられた。


「弁慶さん、あの、」

「黙りなさい。…ああ、傷自体はあまり深くはない。少し掠って引っ掛けただけみたいだ。痛みはどうです?」


私が受けた傷を診ながら、弁慶さんは問う。私は、今更になってからじわりじわりという痛みを感じ、ぐっと奥歯を噛みしめた。


「いッ…触られると痛い、です…!」

「それは当たり前でしょう。傷が浅いといっても、出血してますからね」


突き放すように言いながらも、弁慶さんは取り出した薬と布で応急処置を施してくれた。


「これで大丈夫。全く、貴女は無茶ばかりしますね」


弁慶さんの鋭い視線に射竦められ、私は視線を逸らすこともできずに唇を噛む。弁慶さんに冷たい物言いをされるのはいつもの事だ。でもなんだかいつもとは様子が違う気がして、自分が酷く悪いことをしたかのように錯覚する。
弁慶さんはしばらく私を睨みつけていたかと思ったら、深く息を吐いた。


「――無事で、良かった」

「私も、弁慶さんが無事で本当に良かったと思います」


思わず言葉を返すと、弁慶さんは眉間に皺を寄せた。




「弁慶さんもあかりも、生きてる。……やっと、やっと運命を越えられた…!」


望美ちゃんの声が、聞こえる。
空が晴れていく。

戦いは、終わりを告げたのだった。


140907



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