6 「あかり、大丈夫!?」 望美ちゃんが駆け寄ってくるのと同時に、弁慶さんは私を解放した。それから素早く私の上着を脱がせると、着物も捲くられた。 「弁慶さん、あの、」 「黙りなさい。…ああ、傷自体はあまり深くはない。少し掠って引っ掛けただけみたいだ。痛みはどうです?」 私が受けた傷を診ながら、弁慶さんは問う。私は、今更になってからじわりじわりという痛みを感じ、ぐっと奥歯を噛みしめた。 「いッ…触られると痛い、です…!」 「それは当たり前でしょう。傷が浅いといっても、出血してますからね」 突き放すように言いながらも、弁慶さんは取り出した薬と布で応急処置を施してくれた。 「これで大丈夫。全く、貴女は無茶ばかりしますね」 弁慶さんの鋭い視線に射竦められ、私は視線を逸らすこともできずに唇を噛む。弁慶さんに冷たい物言いをされるのはいつもの事だ。でもなんだかいつもとは様子が違う気がして、自分が酷く悪いことをしたかのように錯覚する。 弁慶さんはしばらく私を睨みつけていたかと思ったら、深く息を吐いた。 「――無事で、良かった」 「私も、弁慶さんが無事で本当に良かったと思います」 思わず言葉を返すと、弁慶さんは眉間に皺を寄せた。 「弁慶さんもあかりも、生きてる。……やっと、やっと運命を越えられた…!」 望美ちゃんの声が、聞こえる。 空が晴れていく。 戦いは、終わりを告げたのだった。 140907 |