3 「望美ちゃん!!」 彼女に駆け寄ろうとした私は、弁慶さんに止められる。政子さんは望美ちゃんを、取り込もうとしているかに見えた。否、政子さんではない。政子さんから出てきたものに、だ。 だが――突然。ぷつり、とそれの姿が消えた。同時に倒れた望美ちゃんが目を覚ましたのは、それから数分後のことだった。 「あれは、荼枳尼天だよ」 目を覚ました望美ちゃんに状況を説明する最中、呟いたのは景時さんだ。荼枳尼天。名前だけなら聞いたことがある。それは、異国からやってきた神である。 「政子様に神が降りていたなんて…信じられないわ」 朔ちゃんは言うが、あの人ならざる力。もし神だったのなら、納得できる。頼朝殿も、政子さんに荼枳尼天が降りていると知って、長年利用していたらしい。 荼枳尼天が姿を消したと知り、望美ちゃんは顔色を変えた。 「じゃあ、やっぱり――私たちの世界に向かったんだ」 彼女は言う。荼枳尼天に襲われた時に、私たちの世界を見られたのだと。 望美ちゃんは有川と譲くん、私に振り返る。帰らなければならないのだと、わかった。このままでは私たちの世界が、危ない。 すると、九郎さんが声を上げる。 「俺も行く。お前たち、あいつと戦うんだろう?俺たちの力が必要なはずだ」 九郎さんだけではない。弁慶さん、ヒノエくん…皆が口々に協力を申し出た。 「でも…一緒には行けないよ。全員で時空を越えるなんてできない」 躊躇う望美ちゃんに、白龍は言う。一度だけなら、ためた力を使って全員で時空を越えられると。それでも、一度だけだ。 「この世界には二度と戻ってこれないかもしれない。それでも、来てくれるの?」 念を押すように問いかけた彼女。――答えは、聞くまでもなかった。 「うん、行こう。みんなで!」 140827 |