頼朝殿に向かって言い放った清盛殿が掲げたのは、一枚の小さな鱗だった。黒曜に煌めくそれに、よく似たものを望美ちゃんが所持しているのを知っている。朔ちゃんが小さく悲鳴を上げる。あれは――黒龍の逆鱗だ。

逆鱗により、清盛殿の周囲には強い力が集まっていく。その全てを頼朝殿に向けようとする彼に、鈴を転がしたような越えで待ったがかかった。


「そうはいきませんわ」


清盛殿に対抗するように立ちはだかったのは、政子さんだ。彼女は頼朝殿を守るように清盛殿に対峙する。軽く笑み舌舐めずりする彼女は、人ならざる力を纏っていた。


「だめだよ、このままじゃまた、戦いになる!絶対にそれはだめだ。私が、止めなきゃ!」


ついに直接衝突した両者に、望美ちゃんは奥歯を噛みしめながら言った。しかし二人の激突はあまりにも激しく、間に止めに入るなど不可能に思えた。
共に人外の力で衝突する両者の戦いは、互角に思えた。
――しかし。


「ひいいいっ!!清盛様が化け物に飲み込まれたーっ!」


その壮絶な光景に、あちらこちらで叫び声が上がる。清盛殿に深手を負わされた政子さんが、その対価として清盛殿の魂を喰らったのである。
――それで決着がついたかと思われた。だが、それだけでは終わらなかった。


「もっと強い魂がたくさん…ほしいわ」


足りない足りないと呟く政子さんは、何と望美ちゃんに向かって来たのである。


「ふふっ、あなたも私に力をお渡しなさい!」






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