2 頼朝殿に向かって言い放った清盛殿が掲げたのは、一枚の小さな鱗だった。黒曜に煌めくそれに、よく似たものを望美ちゃんが所持しているのを知っている。朔ちゃんが小さく悲鳴を上げる。あれは――黒龍の逆鱗だ。 逆鱗により、清盛殿の周囲には強い力が集まっていく。その全てを頼朝殿に向けようとする彼に、鈴を転がしたような越えで待ったがかかった。 「そうはいきませんわ」 清盛殿に対抗するように立ちはだかったのは、政子さんだ。彼女は頼朝殿を守るように清盛殿に対峙する。軽く笑み舌舐めずりする彼女は、人ならざる力を纏っていた。 「だめだよ、このままじゃまた、戦いになる!絶対にそれはだめだ。私が、止めなきゃ!」 ついに直接衝突した両者に、望美ちゃんは奥歯を噛みしめながら言った。しかし二人の激突はあまりにも激しく、間に止めに入るなど不可能に思えた。 共に人外の力で衝突する両者の戦いは、互角に思えた。 ――しかし。 「ひいいいっ!!清盛様が化け物に飲み込まれたーっ!」 その壮絶な光景に、あちらこちらで叫び声が上がる。清盛殿に深手を負わされた政子さんが、その対価として清盛殿の魂を喰らったのである。 ――それで決着がついたかと思われた。だが、それだけでは終わらなかった。 「もっと強い魂がたくさん…ほしいわ」 足りない足りないと呟く政子さんは、何と望美ちゃんに向かって来たのである。 「ふふっ、あなたも私に力をお渡しなさい!」 |