一体何が起きたのだろうと、話を聞こうとするも、彼女の話は中々要領を得ない。


「あかりの手を離し…離しちゃって…また私はあかりを失ったかと、思って…」


私が最後に彼女に会ったのは、昨晩の夕食時だ。いつものように梶原邸にお世話になって、そして夜更け前に堀川屋敷の自室へ帰った。ここはその自室。私が起きる前に彼女がやってこれたのは、きっと弁慶さんが私の都合など考えずに望美ちゃんを通したからだろう。
それは、いい。今がまだ夜明けすぐだということも、望美ちゃんがこんな状況では怒る気にもならない。疑問なのは、まるで望美ちゃんのこの態度が、生き別れた仲間と再開したかのようなそれであることだ。


「でも、でも良かった…!」

「え、あの、えーっと…望美ちゃん落ち着いて? 私、逃げないから、うん」


泣きじゃくる望美ちゃんを抱き返し、背を撫でる。私の動きがぎこちないのは、こういうことに慣れていないからだ。譲くんに見られたら、先輩を泣かせるなって怒られそう。
必死に縋る望美ちゃんを宥める私に、ようやく彼女は私たちの間の温度差に気付いたらしい。はっとして、表情を歪めた。


「もしかして、覚えて…ない?」

「えっと、何を?」

「――最初の運命に、戻って、きた…!」


望美ちゃんの呟きは、私に向けられたものではない。どこか遠い世界の彼方へ向けて発したかのようなその言葉に、何故か私はどきりとした。
すると、涙を拭った彼女は、真剣な顔で私に向き合う。


「あの、あのね。あかり、落ちついて聞いてね」


その表情は、まるで戦場に居る時の彼女を連想させた。


「私、時空を…時間や世界を、飛び越えることができるの。私ね…今のあかりの未来を、たくさん見てきたの」


その力強い言葉は、怨霊を封じる時のその声色に似ていた。

望美ちゃんは、本気で真剣だった。



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