2 それからの行動は、早かった。私と望美ちゃんはすぐに八葉の皆、朔ちゃん、白龍を集めた。福原へ出発する為の準備に忙しくしていた皆は、真剣な顔の望美ちゃんを訝しがりながらも集まってくれた。 ――そして望美ちゃんは、皆に全てを話した。 時空跳躍のこと。蘇った清盛のこと。政子の正体。有川の立ち場。それらを踏まえた上で、今回の和議が罠であるということを。 彼女は、長い長い旅路の中で知り得た全てを明かしたのである。信じてもらえないかもしれないと前置きしながらも。その覚悟の重さは彼女にしかわからない。でもそれは、和議を成功させる為には必要なことだった。隠したままではいれなかったのである。 「私は、どうしても、運命を変えたいから」 聴き終えた皆は、驚きに唖然とした。顔色を変えなかったのは、予め教えられていた私と弁慶さん、そしてリズ先生や白龍である。だけど、誰ひとりとして望美ちゃんの話を疑いはしなかった。それは彼女が神子であるから――というよりも、望美ちゃんの人格故だろう。彼女は意味もなく嘘なんてつかない。彼女が誰よりも頑張ってきたことは、皆分かっていたのだ。 私たちは、すぐに動き出した。 源氏軍への働きかけは、景時さんと朔ちゃんが。平家との戦闘を起こさない為に、根回しを徹底した。 頼朝さんの説得には、九郎さんと弁慶さんが向かった。鎌倉殿を相手にするのは難しいことに思えたが、弁慶さんはにっこり笑って大丈夫だと言っていた。きっと、心配ない。 熊野を背負うヒノエくんは、別当として後白河院に面会を申し出た。武家は皆、院宣が下れば行動が制限される。それを狙ってのことだ。 平家には、有川と敦盛さんが向かった。平家一門の保護を条件に、清盛を説き伏せてみると言った。還内府たる有川が動くのだ。問題は起らないだろう。 そして望美ちゃんは一人、政子さんと対峙していた。 私は譲くんやリズ先生、白龍と共に彼女の後ろへ身を隠している。 140803 |