1 …瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の 奇妙な夢を見た。濁流に、飲まれる夢。勢いよく流れるその中を、抗えないながらも必死に手を伸ばす。誰かを探すように。傍を同じように流されているだろう、彼女の手を掴まなければと思った。遠ざかる意識。それでも、頑張って伸ばした先で、ぐっと手が掴まれる。 感じる温もり。はっと目を上げると、彼女がじっと私を見て言った。 ――お願い、弁慶さんを助けて! …どうして、それを私に言うの? …誰かを救うことができるのは、八葉に関わることができるのは、貴女じゃないの? 湧き上がる疑問。しかしそれを問う前に、身体はどんどん重くなる。瞼が閉じていき、彼女の温もりは遠ざかって――そして… 「あかり!」 鋭く響いた呼び声に、私は目覚めを促されたのだった。 |