「話はわかったけどさ。そんなに難しいこと、オレには興味ないね」


結局、同意するでも咎めるでもなく、ヒノエは吐き捨てた。
理解はするが、共感はないのだ。厄介な感情に振り回されるこの叔父の巻き添えを食らうなど、とんでもない。とても、付き合いきれない。


「あかりは中々魅力的だよ。突拍子のないことろもあるし、そりゃあ望美に比べたら身劣るかもしれない。でもオレは、嫌いじゃないよ」


冷静に自身を見つめている癖に、肝心な部分には鈍いのだ。理屈ではどうにもならないと、早く認めるべきだというのに。恋は落ちるもので、愛は人を変えるのだと。


「あんたが要らないなら、オレがもらうぜ?」

「…”嫌いじゃない”程度で簡単に、手を出すのは止めて欲しいですね」

「なんだ、ちゃんと独占欲あるんじゃん。それなら、早く素直になれよ」


ヒノエの言葉に、弁慶は目を伏せる。


「だからこそ…このままにはしておけないんですよ。僕は、恋慕だとか愛だとか、そんな曖昧なものを信じてはいない。まずは、彼女の隠しごとを暴く必要がある」

「どうするっていうんだ?弁慶の言う通りあかりが隠しごとをしているのなら、簡単には口を割らないんじゃねえの」

「だから、君を呼びだしたのでしょう。任されて、くれますね」


顔を上げた弁慶は、鋭くヒノエを見つめる。
その顔をに少しでもヒノエを困らせようという魂胆が見えれば、辞退するところだったのだが。

(――そこまで本気、なのかよ)

彼の瞳は、余裕のなさを物語る。これは断れそうもない。
ヒノエは、顔を顰めた。


140629



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