「あかりっていうのか…君、本当に魅力的だよ。その慧眼、君も神子なのかい?」

「ち、違います、私はただの同行者です」


ヒノエくんは、私が彼の正体を看破したことに気付いたらしい。面倒なことに、望美ちゃんとはまた違う意味で面白い――と、認定されたようだった。
じっと、試すような彼の表情が居心地悪い。


「まぁ神子じゃなくても構わないさ。どうだい、俺に熊野を案内をさせてくれないかい?」

「ヒノエ、あかりが困っているでしょう」

「そうかい?でも、あんたには関係ないだろ。あんたはこの子、要らないんじゃないの」


見かねた弁慶さんが出してくれた助け舟も、容易にはねのけられた。この様子からすると、弁慶さんとヒノエくんは知り合いどころか中々腐れ縁らしい。弁慶さんが、私以外にここまでぞんざいな態度を取るなんて。

ヒノエくんは、私がいつも弁慶さんから受けている扱いを知らない。だから先程のやりとりで、弁慶さんが私を嫌っているとでも思ったのだろう。
聞いていた望美ちゃんが、怒ったように言った。


「ちょっとヒノエくん、弁慶さんがあかりを要らないわけ、」

「…確かに」


しかし、遮ったのは弁慶さん本人だった。弁慶さんは酷く冷めた目でヒノエくんを見やる。


「…あかりは僕の補佐ですが、もしあかり自信が君に興味があるというなら、僕に止めることはできませんね」

「なら、オレがこの子を口説いてもいいってことだ」


ヒノエくんはそう言うと、弁慶さんから視線を外し私に向き合う。弁慶さんは目を伏せ、背を向けようとした。
私は、それを引きとめるように、声を上げた。


「――ヒノエさん、ごめんなさい。私は、弁慶さんの恋人なんです」


私の視線は、身体は、弁慶さんを追いかける。他の何も、目に入らない。拒絶されても、それでも私は、ただ一人しか欲しくないのだ。


「熊野案内は、弁慶さんにしてもらいたいんです」


精一杯、そう告げると皆は驚き口を噤んだ。中でも一番驚いた顔をした弁慶さんに、私は心の底から微笑みかけた。


140517



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