弁慶さんと、もっと分かり合わなければならない。それが互いのためでもある。
運命だとか大きなこと、まだ信じ切れはしないのだけれど。それでも決めた以上は、気後れなんてしている場合ではない。なのに腰が引けてしまうのは、自信がないからだ。


「有川…私のいいところってどこだと思う?」

「はぁ?突然どうしたんだ」


熊野への道中、私たちは有川と再会した。彼も熊野へ用事があるといい、また束の間の同行をすることになったのだ。


「言っておくが、恋愛相談ならあんまり良いアドバイスできないぜ」

「えっ何で弁慶さんのことだってわかったの」

「顔に書いてあるからな」


言いつつも、聞いてくれる有川は相変わらず良いやつである。私にとっては有川こそが、この世界では一番長い付き合いの人物だ。ただ話を聞いてもらえるだけでも、気が楽になる。
有川も、それをわかってくれているのだろう。唸る私を笑い飛ばす。


「ま、ほどほどに頑張れよ。菅原は根性と努力はすげえから、どうにかなるだろ。弁慶もお前のそういう部分、かなり認めていると思うぜ」

「なげやりだなぁ」


でも、そう言ってもらえるだけ有難い。それだけで、少しは前を向いて歩けるというものだ。
やや表情を緩めた私に対して、有川はふと顔に影を落とした。


「なぁ菅原。お前は、この世界のことどう思っている?」


唐突な、問いかけだった。


「ここはお前の好きな歴史によく似た世界だ…だが、同じではない。この先、俺たちの知るような展開になると思うか?それとも、別の終わりが待っているんだろうか」

「…随分、難しい質問だね」


苦笑いをしながら脳裏を掠める、思考。
――有川は、平家側にいる。薄々そんな気はしていたが、あの神子軍記によって確証づけられた。有川が、噂の還内府なのだ。彼こそが平家を率いて、その滅びの運命を変えようとしている。


「歴史は…決まったものじゃないよ。歴史上の人物も、決められたレールの上を歩いていたんじゃない。必死に足掻いた、その結果がああなっただけ」


私は、言葉を選ぶ。彼がどんな状況で、どんな苦悩をかかえているのかは理解しきれない。


「だから、この世界はまだわからない。足掻いただけ、いろんな結末が、運命が、用意されているんじゃないのかな」


でも、少しでも有川の救いになったら。そう思った。





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -