運命の変化により、大きな改変が起きたのはあかりと弁慶のことである。
新たに”未だ知らない道”を歩み始めた望美に、不安をもたらしたのがこの二人だった。

あかりは熊野参詣以降、公私共にどんどん弁慶に近づいていった。恋人として彼に寄り添うだけではない。軍師補佐として大きな力を発揮するようになったのである。
望美が知る限り、今までは雑用や小姓のような働きが多かったあかりは、もうそのようなことは任されなくなっていた。

おかしい、と感じた時には既に遅かった。

大和田泊。
あかりの動きを不審に思って後をつけた。すると彼女が弁慶の助言の下、平家軍追討の指示をしている場面に遭遇したのである。
問い詰める望美に対して、あかりは冷静に現実を見据えていた。
そのすぐ後だ。偶然見かけたあかりと弁慶の寄り添う姿に、自分の介入は不可能だと自覚した。

京へ戻り、呪詛の解除に慌ただしかった頃。
弁慶とあかりの良くない噂が出回っていたらしい。弁慶が京を荒廃させる事態を招いただとか、あかりが弁慶を色仕掛けで惑わせているだとか。根も葉もない噂。しかし二人の後をまたつけたのは、信じたくても否定しきれない疑いがあったからだ。その疑いを晴らしたいと願ったからだ。
だが望美に伝えられたのは、二人の平家への寝返り宣言だった。余計、彼らの胸中が見えなくなった。


そうして、何ひとつ解決できないまま屋島攻めを迎えてしまった。
望美は不安を拭えないながらも、二人のことを信じていた。きっと、彼らは自分たちの味方だと。

待ち受けていた土壇場での裏切り。
源氏は二人の策に嵌められた。望美も人質として捕らえられ、平家軍へと連行された。

(きっと何か考えがあるんだ)

半ば自身に言い聞かせるように、望美は思い続けた。だから、寝返り宣言を聞いても望美はそれを誰にも言わなかったし、弁慶やあかりの裏切りにも抵抗しなかった。

勿論、信じたくなかったのもある。ただ絶望に打ちのめされているくらいなら、少しでも希望を持ちたいと思っていた。
何よりも。望美には、ただ私利私欲の為に彼らが仲間を犠牲にするなんて、なんだか腑に落ちなかった。


131103



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