5 熊野から京に戻ってすぐ、源氏軍は和議を持ちかけて平家の油断を誘った。実際には和議は行わず、背後から奇襲を仕掛ける。指示を下す政子様になすすべなく従う一同。 一週目、望美の経験と同じ展開である。 記憶をなぞるように、一行は平家陣営の背後へとやってきていた。敵陣目掛けて崖を下る大胆な作戦。 (でも…これではいけない…!) 前回は、九郎の計画通りに奇襲をかけたら、まるで奇襲について知っていたかのように平家軍が待ち構えていたのだ。この奇襲は直前に九郎が思い付いたことなので、情報が漏れているということはない。 からくりは分からないが、平家の想定内だったのだろう。 同じ轍を踏むわけにはいかない。望美は今回前もって、あかりに平家が感づいている可能性を伝えた。 しかし、時空跳躍を隠したままこれを伝えるのは難しいことだった。 ただ信じて、という言葉で一体どこまで本気に取ってもらえるのか、不安もあった。 しかしあかりは、根拠の言えないこの望美の意見を、信じてくれたのだ。あかりから弁慶さんへ話がいき、崖下へ偵察が送り込まれた。 すると案の定、そこには平家の兵が張り巡らされていたのである。 これが功を奏した。 九郎たちは別の場所からの奇襲を決行し、結果、源氏軍の勝利への一手となった。望美たちはそのまま、生田神社から攻めてきた景時率いる源氏本陣と合流。平家はすごすごと、逃げ落ちていった。 運命は変えられる。きっと今度こそ、皆が揃ったエンディングを迎えられる。 時空跳躍による運命の上書きは有効であると、この時望美はようやく実感した。 だが、道が変われば新たな不安も生まれる。そのことにはまだ、気づくことができなかった。 |