望美が戻ったのは、夏の熊野。記憶通りに全てが巻き戻った世界。
ここが、二週目の開始地点だった。

最初の記憶では、熊野の棟梁に会うことを一番の目的としていた。だが、それだけではいけないと彼女は学んでいた。
この熊野での滞在期間は、あらゆることへの準備をする最後のチャンスである。熊野を去ればすぐに、合戦が押し寄せてくる。

望美は、何でも貪欲に吸収しようとした。戦いの術、現在の情勢、知識、一見無駄と思えることにも積極的になっていった。

その成果か、変化はすぐに訪れた。

一番大きなそれは、あかりと弁慶の関係である。
あかりは、前回望美が通った時空よりも積極的に弁慶に関わっているようだった。そして速玉大社を過ぎたあたりで、彼女は弁慶と二人きりで別の道を進むことになったのだ。

望美は、嬉しかった。これは良い変化に違いないと思った。相変わらず熊野別当には会えなかったけど、確実に前回よりも熊野で得たものは多かった。

そして熊野を去る頃には。
弁慶とあかりの二人は、それまでのぎこちなさなど嘘みたいに仲睦まじいカップルになっていた。少なくとも望美には、そう見えた。





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