終わらない堂々巡りを、繰り返している。


望美はあらゆる可能性を探り、試した。それでも望む結末に行き着くことはない。
いくら龍神の神子でも、運命を書きかえるだなんて、おこがましい行いなのだろうか。叶わないことなのだろうか。そう思ってもなお、望美は改変を願う。
あのあかりと弁慶の最期が、脳裏から離れないのだ。

――あんな終わり方、認められない。

数多の死を目にした。あかりと弁慶は何度も望美の前で息絶えた。けれど思い出すのはいつも、最初の、二人手を取り合って逝った情景。
望美は、唇を噛みしめながらまたそれを思い返す。抱えた冊子――神子軍記は、望美が何度も読み返した為に、かなりよれてしまっていた。
あかりが託してくれたこの冊子は、今、望美のただひとつの心の支えだった。これがあったから、何度も巡り、巡り、それでも目的を見失うことなく居られたのだ。
望美は何度もそうしたように、その表紙を撫でる。

その時、はっとした。

――“あの熊野”へ、いけないだろうか。

最初に時空跳躍をして、辿りついた時空。夏の熊野。そこであかりは弁慶と二人きりで過ごすことになり、深い仲になったのだ。よく考えたら…二人が一時的にでも結ばれたのは、あの時空で、だけなのだ。

…あの時は、あかりがあまりにも弁慶へ近くなりすぎた。自らの手を染め、軍師補佐としての頭角を表し、そして二人手を取り合い自分の命と引き換えに清盛を滅ぼした。

(あの未来をどうにか変えられれば。二人の死さえ避けられれば、全て上手くいくんじゃないかな…)

今の望美は、あの時の望美とは違う。
二人の真意を知り、結末を知っている。あの時知り得なかった情報は、また違う結末をもたらすだろう。望美は、今までの経験からそれを知っている。

思い立ったが吉日。望美は逆鱗に願い、時空を渡った。
次こそは、上手くいくと信じて。




しかし。
運命はどこまでも、非情だった。




「あかり…?僕には聞き覚えのない名前ですが、神子の知り合いですか?」


弁慶のその一言に、目の前が真っ暗になった。



140117



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