4 正直な話、二人が結ばれたからといって、その後生き延びるとは限らないのだ。もしかしたら、二人はそもそも長くは生きられない運命にあるのかもしれない。もし上手くいっても、近いうちに死ぬ運命は避けられないのかもしれない。 それは、わかっている。 それでもあかりと弁慶の幸せを望んでしまうのは、あの姿を見せつけられてしまったから。あんあに悲しい――それなのに美しい、完璧な愛を、最期を、忘れることができないのだ。 だから望美は諦めない。道を、探し続ける。 「あかり、弁慶さんといて何も思わないの?あんなにも素敵な人なのに?」 「尊敬は、しているけれど…。私に釣り合うような人では、ないから…」 弁慶に恋慕を抱かないあかり。 あかりに心を開かない弁慶。 お互い、あと少しのところでギリギリの均衡を保っている。まるで、愛し合うことを避けているかのように。 それが悲しくて、見ていられなかった。 「もしかして望美ちゃん、弁慶さんのこと、好き?」 「――まさか、それはないよ」 「そう?弁慶さんは望美ちゃんが言うように素敵な人だし、もしそうなら何か協力できると思ったのにな。あ、でも九郎さんや景時さんも素敵だけれども」 にこにこと、悪気などなく笑うあかりに、胸が痛む。 (私が弁慶さんを好きでは意味がない、貴方が弁慶さんを好きだった筈でしょう) 矛先を失った感情が燻り、望美は曖昧に笑った。 140110 |