――「人生とは、偶然の連続で成り立っている」
とは、全く言い得て妙である。


望美は、自分の認識の甘さを痛感した。何が切っ掛けになるか分からない。本当に些細な行動ひとつで、すぐにずれる。
怖い。余計なことをして間違ったらと、足が竦む。
それでも、できることは試さなければならない。動かなければ何も変わらない。何もせずにただ終わっていくこと…それが一番嫌だった。

憂鬱な、そして焦る気持ちを抑えるように望美は笑う。そして、向こうからやってきた仲間に声を掛けた。


「あかり、最近どう?」


ここは、春の京。あかりと友達になってすぐの、京でのある日だ。

あかりは未だに、望美に対して少し遠慮をしているようだった。まだ人見知りをしているのだろう。
でも望美にとっては、もうだいぶ前からあかりは友達。当然だ。望美にはもう何度目かの「春の京」なのだ。

あの後――…弥山であかりの最期を見届けた後、望美は宇治川まで遡った。この世界での一番最初へ。自分の信じる、最高の結末を求めて。
一番最初から注意深く行動すれば、どうにかなると考えた。けれど、あっちが上手くいけばこっちが、こっちをどうにかすると向こうが、といった風に必ずどこかに綻びが出る。
結局中々上手くいかず、今も頻繁に時空跳躍を繰り返していた。


「ええと…、あまり変わりはない、かな。特に大きな出来事もないし…」

「弁慶さんとは、どう?何か変わったりしないの?」

「何か?ううん、何もないよ。仕事はちょっと忙しいけど、慣れてきたから注意されることも少なくなってきたんだ」


何度か巡るうちに、大体の展開が読めるようになっていた。どの選択肢でどうなるのか、誰が何を企んでいるのか、把握できるようになりつつあるのだ。
…でも、人の心までは推し測ることはできなくて。


「それに、弁慶さんはいつも、優しいもの」


何度巡っても、上手くいかない。
鬼門は、ここだった。






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