しまいなおす言葉




そもそも、助手が欲しいとは微塵も思っていなかった。
ウチにとっての機械いじりは仕事という以上に生きがい。だから自分の作業に他人が関わるのはあまり良い気がしないし、共同作業というのは煩わしい。故に、ウチは助手はとらないと決めていた。


「助手、欲しくない?」


白蘭に言われた時は正直「いらない」と答えようと思った。これまでも、幾度となく正一に、「部下を手伝わせないのか」「助手はいらないのか」と尋ねられていたのである。正一もウチと同じ技術畑出身だからか、自分の研究に他人に関わらせたくないという気持ちはわかってくれていた。でも正一は最低限の情報を与え、チェルベッロに手を借りている。それは一人でする仕事には限界があるということだ。それはわかっていたが、ウチはどうしても他人との共同作業に気が進まなかったのだ。


白蘭に助手の話を振られたとき、断らなかったのは白蘭がある女の情報を既に抑えていたから。あの時、正一に着いていったロボット工学展で出会った女の。
偶然聞こえてきた彼女のその台詞は、素人とは思えない程鋭い指摘で、ウチは思わず彼女を引き止めた。(でもニュートンも知らないやつが玄人なわけはなく、やはり素人だったが)


最初は、適当に手伝わせてあとは放っておけばいい、利用価値がなければ正一に押し付けよう、とさえ思っていたのに、改めて対面した女にウチは困惑した。
頭も良くないし泣くし、めんどくさい。でも##nameは苦手な物理も数学も、ウチの話についてこようと必死に勉強して、かと思えばこの前みたいにピッツァなんかではしゃぐ。

煩わしいかと思っていた助手子との仕事は、正直楽しかったのだ。

彼女に声をかけたのはウチ。そのせいで彼女、一般人の命が狙われるなんて寝覚めが悪い。だから、助手にした。彼女も承諾した。それだけ。

最初はそれだけだった。それだけだからこそ、始末が悪い。



「なんで、私を助手にしようと思ったの?」



彼女の、助手子のその問いは、ウチの答えを躊躇わせるものだった。




081217



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