手をつなぐことに何か問題でも?




「わあ、イタリアだ…!」


イタリアへ来て、早1ヶ月。それなのに何を今更なのだが、仕方がないことだ。なんせ、1ヶ月間みっちりと高校物理から専門知識まで徹底的に叩き込まれいたのだから。(しかもスパルタだった)(スパナだけに)
出掛けている時間がないのは勿論、食事さえ抜かれる始末。学生時代よりも勉強していたようなのは、気のせいではない。

漸く合格ラインに届き、今日は、はじめてのイタリア観光。勉強明けというのも手伝って、我ながら、今日のテンションは異常である。今日の私はひと味ちがうぜ!


「…観光、じゃなくて」

「はいはい、部品の買い出しでしょ?わかってるって!」


イタリアは、とても素敵な街並みだ。お店もお洒落だし、店員さんも親切。そんな所へ勿論ツナギ姿でいけるわけなく(女の子としてね)私は唯一日本から持ってきたワンピースに腕を通した。
ちなみにスパナは普通にツナギのままで行こうとしたから、無理やり着替えさせたんだけど。


「助手子、はしゃぎすぎだ」

「だってイタリアだよ?」

「たかがイタリア」

「それはイタリア人だからそう思うんだよ」


それにしても、同じ地球上なのにこうも違うのか。当たり前だけど、道行く人がイタリア人ばかりって凄い。みんな色素が薄くて肌は白くて、逆に完全に黒髪で黄色人種の私が目立つのも新鮮。看板も全部イタリア語だし。当たり前だけど。


「本当に、みんな何喋ってるかわかんない。ミルフィオーレの人は日本語喋れるから、実感なかったよ」

「…みんな、あんた見て阿呆面のジャッポネーゼだっていってる」

「うそ!?」

「嘘。」


スパナは相変わらず、興味が無さそうな顔だ。彼は興味があるものにはとことん執着する癖して、そうでないものには無頓着らしい。
でも今日という今日は、私のイタリア観光に(部品取りに行くついでだけど)付き合ってもらうのだ。1ヶ月間のスパルタ教育のお礼…もとい仕返しも含めてね。


「やっぱりイタリアっていったら本場のパスタかな?」

「さぁ」

「あぁ、でもトマト煮込み的なのも美味しそうだよね」

「別に」


素っ気ないスパナを無視して、私は彼の腕を掴んだ。行ってみたいところは山ほどあるけど、休みは今日一日だけ。ぐずぐずしていたら、すぐに時間がなくなってしまう。


「恋人に見られちゃったらごめんね」


そう言って、私はスパナの腕に、自分のそれを組んだ。そして急に立ち止まったスパナを引っ張って、道を急ぐ。無駄な時間はない。





(あれ、スパナ顔赤い? 道を急ぐ為とはいえ、そんなにいやだったのかなぁ)

(…不意打ちは反則だ、ばか)

081203



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