久々知兵助、妄想に溺れる


好きなものと好きなものを組み合わせたら、より好きになるのではなないか。例えば、桜と団子だ。全く別のものなのに、一緒にするとピッタリと当てはまる。桜の下だと団子もより美味しく感じられる。そのうち、桜を見るときに団子が無いと寂しく感じるようになるし、団子を食すとき桜が無いと味気なく思うようにすらなるという。
この法則を、俺が一番好きなものに当てはめて考えてみる。すなわち、豆腐となまえだ。


「なまえ、どう?」

「うん、美味しい。また料理の腕上げたね。この前のものより好きだよ」


目の前で、俺が作った豆腐料理を頬張るなまえ。俺の彼女。豆腐好きが高じて、数々の豆腐料理を生み出す趣味を持っている俺は、こうして定期的になまえを家に招き試食をしてもらっている。俺が極度の豆腐好きなのを皆は奇異な目で見るが、なまえは違う。ちゃんと理解して、許容してくれる素晴らしい彼女である。
こうして、なまえとゆったり豆腐を食べる時間はまさに至福。エプロンを外さないまま、俺は机に肘を付いて向かいのなまえを見つめた。

なまえの口に運ばれる豆腐。箸で器用につまみ上げられ、なまえの唇へと近付いてゆく。ぺろり、と可愛らしい舌がのぞき口内に誘う。――その、一連の流れに思わず喉が鳴った。

例えば、だ。
なまえと豆腐を一緒にしたら、とっても魅力的ではないだろうか。今も一緒だろうと思うかもしれないが、まだ豆腐が足りない。面積的にもインパクト的にも。もっと盛大に、なまえを豆腐だらけにしたい。白いなまえの肌に、更に白い豆腐はきっと映えるだろうな。今でさえ、ほら。唇に豆腐が触れ、扇情的な情景を生み出しているというのに。

(大量の豆腐を、なまえにぶちまける、とか)

想像しただけで胸が熱くなった。自分の発想に、自分で興奮する。これは実行する他にないと思う。
でもそれじゃあ豆腐を粗末に扱っているのではないかって?問題ない。だって俺が豆腐を無駄遣いするとか、有り得ないだろ。大丈夫だ、だって最終的には綺麗に俺が片付けるから。


「なまえ、それ食べ終わったらさ、ちょっと試したいことあるんだけど」

「ん、なに?」

「楽しいコト」




なまえと豆腐。共通点はふたつ。


ひとつ、俺が大好きなものだってこと。

ふたつ、どちらにせよ最終的には俺が残さず食べてしまう、ということだ。


130309



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