根拠のない自信


刈屋家は的場家には劣るものの、昔から代々続く祓い屋の家系だった。
けれど力を持つ者は一族の間には少なく、的場一門へ組み入れられるのも早かった。そして数代前からは、明らかな能力者不足に見舞われたのである。

その状態の中で産まれた私は、幸か不幸か、当日の刈屋家の中で最も強い力を持っていた。それどころか、歴代の中でも片手の指に入るほどの霊力だ。
当然両親は、より強く見える目を持った私の恐怖などお構いなしに、私を祓い屋のエリートとして育てることにしたのである。


「私、大学院に行く」


電話の先で、的場が息を吐くのを感じた。


「帰ってくる気は、ないのですね」

「…怒らないの」

「一門外の人間がどうなろうと、知りませんから」


冷たいようにも感じるその言葉は、しかし私にとっては心地よい。特別扱いをされるより全然良かった。

私は、成長するにつれて次第に祓い屋家業に嫌気がさしていた。無理をいって地元の高校に上がった。この頃には既に、祓い屋として的場一門の中枢にした。しかし同時に、一門から出ることも考えていた。
それから、家を出て都会の大学に進学した。研究が性にあっていたようで、教授にも気に入られ、院の試験を突破したのだ。

両親は、大学を出れば私が帰ってくると思っていたらしく、院生になると告げると勘当を言い渡された。既に四年も実家に帰っていないから、今更なのだが。
今となっては私に構ってくるのは、頭領の静司くらいだ。


「でも姉さんが死ぬのは、寂しいですね」

暫く沈黙したかと思えば、何を思ったか静司は呟く。


「死なないよ」

「ええ、死なないでしょう」


そして彼は、言い切った。


「どうせ貴女は的場に帰ってくる。それまで待っていますよ」


静司の声は、暫く聞かないうちに随分大人びたようだった。きっと背もまた伸びているのだろう。そして頭領として、より立派になっているのだ。

私と彼は、昔は確実に同じ道を歩いていた。けれども今、私たちの道は交わることはない。
どこで道を違えてしまったのだろう、と私はこの時思ったのだ。


120107



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