癒やす桜智 隣に座る彼の肩に、こてんの頭を預けてみた。洋服越しに伝わる体温に、なんとなくほっとしていると、彼は読んでいた本をぱたんと閉じた。 「どうか…した?」 私の方に目を向けて、桜智は尋ねる。色素の薄い彼の瞳に自分が映っているのを見て、少し嬉しくなった。 「ちょっと、だるくて」 弱々しい声で答えれば、桜智は顔色を曇らせる。でも実のところ、特に具合が悪いわけではない。 少し疲れてしまったのだ。外で気を張っているせいか、今はすっかり私は腑抜けているのだ。それで、ちょっと桜智に甘えたくなったのだ。 「大丈夫かい…?無理は、しない方がいい。横になる…?」 「ううん、そこまでじゃない。それより、ぎゅってして」 見上げるようにして言うと、桜智は瞳を瞬かせて、安堵したように破顔する。 「…今日の君は、随分甘えん坊だね」 桜智は私の身体を起こすと、向かい会うようにして私の頬を両手で挟む。 「でも……。君が、こうして私に甘えてくれるのが…ちょっと嬉しいよ」 そして、私の額に唇を落とした。妖艶に笑んで、そんなことをするものだから、私の顔はとうに真っ赤である。 120111 |