癒やす的場 なんでこんな状況になってしまったのか、いまいちよくわからないのだが、ともかくそういう状況だった。 「ほら、大人しく頭を預けなさい」 的場の催促を、無言で拒否する。しかし彼の片目が嫌な色に光るのを見て、慌てて指示に従った。 「じっとしててくださいね」 それは俗に言う、膝枕の状態である。 ちなみに、的場がしている方だ。私は的場の膝に、何がどうしてか頭を乗せていた。 「いいよ、大袈裟だよ」 「駄目です。大事に至ったら大変だ」 「ちょっと砂が入っただけだって」 「駄目です」 妖怪に遭遇して、なんとか相手をしている時に耳に違和感を感じたのだ。看てもらいたいとは言ったが、まさか当主様直々に耳掃除してくれなくても。 「ほら、じっとしてないと鼓膜傷つけますよ」 「えっちょっと怖いから本当にやめてよっ」 「なんか上から、良い眺めです」 「く…屈辱的…」 かなり照れる状況だが、拒否権はないらしい。大人しく横になると、的場の膝は意外にも乗せ心地が良くて、ちょっとだけときめいたのは秘密だ。 120111 |