受験生と大人フゥ太


目の前にぶら下がる物体と、それをぶら下げている背の高い男の子を私は見比べて、ようやく喉から言葉を絞り出した。


「…わざわざ、取りにいってくれたんだ」

「だって、もう追い込みの時期でしょう。今年はクリスマスもお正月も無いって聞いたから」

「ああ…もしかして、綱吉さんに」


問い返すまでもない。フゥ太は沢田家に頻繁に出入りしているし、私はこの前ばったり遭遇したときに、綱吉さんにその話をしていたのだ。


「僕は貴女より年下だし、勉強を手伝うことも難しそうだから。僕にできることはこれしかないと思ったんだ」

「ん、ありがと。嬉しいよ」


私は笑って、それを受け取る。
フゥ太は私よりいくつか年下の、いわば弟分といったような存在だ。ご近所のお兄さんである綱吉さんの家に、滞在していたりする。
ただ、私が高校生になってからは疎遠気味だ。そして見ないうちに彼は、どんどん大人びていた。


「……ごめん、実は自分の為に取りに行ったんだ、それ」

「ん?」

「邪魔しちゃだめだて思って我慢、してたんだけどやっぱり会いたくてたまらなかった」


もう私より身長の高い彼に見下ろされているのに、私には肩を落とす彼が小さい頃のフゥ太と被ってみえた。知らないフゥ太になってしまったような気がしていたのだ。だから、少しだけ安心する。


「確かにフゥ太にそんな可愛いこと言われたら、お姉ちゃん、会わないわけにいかなくなっちゃうからね」


強めに、彼の肩を叩く私。フゥ太は困ったように笑って、不意に唇から笑みを消した。


「ねえ僕、毎日祈ってるからね。貴女が、受かりますようにって」


もらった御守りを握る私の手を、フゥ太はその上から包み込む。


「だから、受かったらちゃんと聞いてね。僕の、お願い」


じっと私を見つめるフゥ太。やっぱりそこには、私の知らない彼の一面があるようだった。


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受験生がんばれ!



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