風邪と弁慶


「風邪ですね」


鼻詰まりに止まらない熱。診断を受ける前からそんな気はしていたけれど、やっぱり思った通りの宣告が下された。


「どうしてもっと早く言わなかったんです。風邪はある程度、早めの対処で治せるものなんですよ」

「…なんだか、認めてしまったら悪化するような気がして」


弁慶さんが呆れたように言うものだから、つい、言い訳がましい口調になってしまう。


「薬を用意しました。今日は一日安静にしていなさい」

「ごめんなさい…」

「そう思うのなら、早く治すことですね」


有無を言わさない彼にそれ以上返す言葉もなく、身体のだるけに引きずられるような感覚に、素直に身を任せた。
間もなく意識を失った私に弁慶さんが何を呟いたのか、知るはずもなく。


「貴女がそんなんだと、僕の調子が狂うじゃないですか…」


弁慶さんがずっと私を看病してくれていたというのは、ずっと後になってから望美ちゃんが教えてくれるのであった。


111016〜



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