いい夫婦の日の弁慶 京での暮らしにもなれたとはいえ、未だにこの現実が夢なのではないかと思うことがある。この頼りになる、しかし曲者の軍師が私の夫なのだと。 今日は休日だからと、朝もゆっくりめだ。昨晩は就寝が遅かったとはいえ、未だに二人布団にいるこの状態は、彼にしては珍しい。珍しいといえば彼の寝顔をゆっくり見られることもそうそうあることではない。いつも夫は、私より遅く寝て早く起きるから。もっと身体を大切にしてほしいところである。 それにしても、こうして見ていると美しい人だと思う。見た目だけではない。彼はとても美しい…身の内に秘めた覚悟や責任感、その生きざま…彼のすべてに私は惹かれている。 「…そんなに人の顔をじっと見て、楽しいですか」 「……! べ、弁慶さん起きていたんですか……?!」 「そんなに熱い視線を向けられたら、ね」 急に瞼を開いた彼は、かすれた声で私の名を呼ぶ。いつもと異なり乱れた紙や襟元に、今さらではあるが、どうしようもなく頬が熱くなった。 「おや、誰が目を反らしていいと言いました?」 「……!」 誤魔化すように背けかけた顔を、無理矢理戻される。見つめ合う彼の瞳には、目を丸くする自分が映っている。弁慶さんは、私から目をそらさないまま、更に顔を近づけ、囁いた。 「ふふ、今度は僕にじっくりと見せてくださいね。愛しい妻を、余すところなく、僕にください」 そんなことを言われて逆らえる筈もなく、私は更に、彼に溺れる。 夫婦薬師でした。 151122 |