桜智とホワイトデー


外国ではホワイトデーという日なのだと、私は聞いた。バレンタインデーという日は桜智に聞いて知っていたから、馴染みの菓子屋のものを彼へと贈ったのだ。でもそれは、ついで。本命はゆきちゃんである。


「ゆきちゃん、わざわざありがとう。とっても嬉しいわ」

「わたしも、喜んでいただいて嬉しいです」


ゆきちゃんは、バレンタインデーのお返しだと私に贈り物を持ってきてくれた。手作りのお菓子である。はにかんで差し出す彼女に、きゅんとした。ゆきちゃんはどんな時でも可愛らしくて、理想の神子様だとときめかざるを得ない。
と、ゆきちゃんから貰ったものとは別に、お洒落に飾り付けられた包みが置いてあるのを発見。一体誰から、いつの間に…と思っていると、横から聞きなれた声がした。桜智である。


「ああ…それは私からだよ」

「え、桜智から?珍しい、一体どうして?」

「バレンタインデーの時、私にもくれただろう。いつも世話になっているし、今日は感謝と親愛のしるしに贈り物をする日だからね。君にも…贈らなければと思ったんだ」


彼は何故か、じっと私を見つめた。そして、少しだけ照れくさそうに続ける。


「いつも、ありがとう」


――見慣れた筈の表情なのに、その笑顔に鼓動が速くなった。


「な、なによ今更…でもありがたく、いただくわね」


やっとのことで答えると、彼は満足したように頷き、去っていく。
改めて包みを見る。その飾り付けのセンスや使われている花が私の好みのものであることに、気が付いた。その中身も。私が欲しいと言っていた髪飾りだ。

(やってくれるわ…)

頬の熱は、誤魔化せそうもない。ああ、いやだ。こういうところが、たまらなく、好きなのだ。


140316



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