風邪とスパナ


「大丈夫だから、本当に」


心配そうに覗き込む彼に、私は微笑む。
けれども無理に笑ったせいか、かえって心配させてしまったようで、スパナは眉尻を下げて私の額に触れる。
元々あまり、風邪はひかない方だ。だからいきなり高熱が出て、スパナをびっくりさせてしまったのだ。


「ウチが無理させたから…」

「そんなことないよ。だって、徹夜はいつものことじゃない」

「でも、こんなに熱くて…もし治らなかったら、」

「薬飲んだでしょ。すぐ治るとも言われたから問題ないって」


既に、医務室で処置してもらった後だ。でも、彼は心配顔のまま、今にも泣きそうな表情で私を見ている。


「ウチには何もできない。悔しい」


ぎゅ、と噛みしめた唇。
本当に仕方ない人だと思いながらも、私は彼の袖を引く。


「…じゃあ一つだけ、お願いしていいかな」

「何?何か、できることある?!」

「手、握ってて欲しい」


するとスパナは、真剣な顔をして私の手を取った。普段は見れないその表情に、新鮮さを感じたりして。たまには風邪もいいかなあ、なんて思ってしまうのだ。



111016〜



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