肌寒い雷蔵さん


首を傾げる彼を見つめ続け、もう随分な時間が経った。


「うーん」


雷蔵の悩み癖は毎度のことであり、こうして悩み込む彼をひたすら見つめるのも慣れたものだ。
ある時には朝食のメニューを、ある時は使う武器の種類を、またある時には後輩に差し入れるお菓子を、彼は選択を迫られる度に悩む。

彼を忍者に向いていない、面倒くさいという輩もいるけど私はそうは思わない。だって、可愛い。雷蔵は悩む姿も素敵だ。ベタ惚れだなんて指摘されなくてもわかっている。悩む姿を見つめるこの時ですら、至福なのだ。
そうして私は今日も彼を見つめている。彼の部屋で、せっかくのデートだけれど、全くこれでも退屈しないのだ。

なんて、考えていたら。


「うわっ、ら、雷蔵……!」


唐突に腕を掴まれ、前方に引っ張られた。完全に油断していたので、受身もなにもない。そのまま、彼の胸の中へ飛び込むかたちになる。


「寒いから、」


私の腕を掴むのと反対の手が、腰に回される。ぎゅっと、抱き寄せられて上の方から声が聞こえた。


「寒いから君と手を繋ぎたいなって思ったんだけど、右で繋ぐか左で繋ぐか、もしかしたら君は嫌がるんじゃないのかとか、色々悩んじゃって」


苦笑するような、柔らかで穏やかな声。大好きな雷蔵の声だ。


「決まらないし君はあったかそうだから、いっそ抱きかかえさせて貰いました」


なんて、お茶目なことを言うものだから。
きゅーんと胸を打ち抜かれた私は、いかがわしく這い回る、腰に回された方の手については多少大目に見ようと思う。



131020〜
大雑把雷蔵さんの男前さったらない。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -