励ます銀時


春は憂鬱。
新学期やら新年度やら、何かと慌ただしい世間様につられて、私もガクリとうなだれてみる。けれど皆様と違って私は、春だから憂鬱で、うなだれているのではない。
万年だ。万年、仕事もお金もなくてがっくりしている。


「銀さんどうしよう。私たち、お先真っ暗だよ。もう一銭もお金残ってないよ」


ダラリとソファーに寝そべる男に話しかけた。そう、彼こそが私の運命共同体である。


「ねぇ、銀さーん」


ジャンプを顔に乗せたまま、ぴくりとも動かない銀さんをつつくと、彼はようやくこちらを見てくれた。


「さっきからうだうだと、悩んでばっかで辛気臭ェ」

「だって…」


思わず俯いた私の肩を、銀さんは乱暴に揺する。そして神妙な表情で見つめられた。


「良く聞きなさい。確かに俺たちにはもう金は殆ど残されていない。だが、よく考えろ。人生、金が全てなのか?」

「………違う」

「そうだろ。懐は寒いが――俺にはお前がいる。お前には俺がいる。な、心が満たされていれば十分だろ」


最後にぎゅっと抱き寄せられて、それからふらっと銀さんはどこかへ行ってしまった。
実に、上手く誤魔化された気しかしない。

(今年はバイトを増やそうかな…)


もっと上手く生きる方法があるのかもしれないが、私には地道に働くしか思いつかなかった。そして結局、あの駄目な男を、養ってやらねばと思ってしまうのだった。



120427



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