其の三


翌日に待ち合わせの約束をして、ゆきたち一行は一旦、下宿先である二条城へ帰ることになった。


「慣れたとはいえ、城が下宿先なんて贅沢だよなー」


都の言葉に、ゆきも頷く。天海には頭が上がらない。彼の協力がなければもっと困ったことになっていただろう。一行の帰りを待ちわびていたらしく、既に部屋には龍馬が居た。


「お嬢、文鬼には会えたかい」

「はい。とても素敵な方でした。明日、詳しいお話を聞かせてもらう約束をしたんです」

「へぇ。お嬢にしたわれるなんて、羨ましい男だな」

「いや、坂本殿。文鬼は物凄い別嬪な女性だった」


チナミの言葉に龍馬が目を丸くする。ゆきには桜智がいたからすぐに見つけられたのであり、やはり世間的には織部文鬼の正体は全くの不明であるらしい。元の世界とは異なり、完全な男性社会であるこの世界。まさか女が、あれほどの知的な随筆をかけるとは思われもしないのだそうだ。


「で、白龍の神子についての進展はあったのかい」

「それが、明日カオルさんの家へお邪魔することになったんです」

「夢の屋と現の文鬼、両方味方につけるなんて流石お嬢だ」

「私はちょっと、得体の知れなさを感じた。福地はああいうけど、あまり信用しすぎるのも良くないと思う」


消極的な都の発言に、ゆきは不安そうに背後の男を見上げる。


「・・・瞬兄も、そう思う?」

「彼女が危険とはいいませんが、福地の言う"長くなる話"を明日、聞いてみる必要があるでしょう」


唯一彼女を知る桜智は、先程から姿が見えない。彼にとってこの二条城は、職場のようなものだ。色々用事もあるのだろう。


「よし!じゃあ明日は俺も同行しよう。これだけ人手がいれば、仮に桜智がその別嬪さんに味方をしても、お嬢は安心だろ?」


龍馬の案に、ゆきは頷いた。





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