其の三


女から見ても、綺麗。そんな彼女に気を取られていると、背後から妙な視線を感じた。まさかと思って都が振り返ると、そこには案の定、福地がいた。


「おい、どこ行ってたんだよ。何かわかったのか?」


都は問いかけたが、しかし福地はそれに応じることはなかった。


「桜智さん?」


ゆきも首を傾げる。が、福地の視線はゆきのその先に向けられている。福地が、ゆきの声に答えないなど珍しい。驚いた都がその視線を追うと、件の美女がいた。
流石にあれほどの美女になると、福地でも気になってしまうのだろうか。


「…カオル」


しかし彼の呟きは、存外親しげなもので。


「あら久しいわね、桜智」


福地の呼びかけに振り向いた彼女も、当然のように福地の名を呼んだ。知り合いなのか、と驚くより先に福地は彼女の隣へ立ってこちらに振り返った。


「ゆきちゃん、"織部文鬼"だよ」


福地の紹介にゆきと都が目を丸くする。美女は、妖艶に微笑んだ。



110912



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